2026.08 循環器 呼吸器救急

「様子を見ていい?」「すぐ病院?」
——体の中に水が溜まる病気

🐾 突然ですが、クイズです

ワンちゃん・ネコちゃんの体の、およそ何パーセントが「水」でできているでしょうか?

答えは、約60%。体の半分以上が水、ということになります。

「思ったより多いな」と感じた方、多いのではないでしょうか。それくらい、水は体にとって欠かせないものです。

体の中で、水はこんな働きをしています

  1. 栄養素を運ぶ — 血液として体をめぐり、栄養を体のすみずみまで行きわたらせます。
  2. 体温を調節する — ワンちゃんがハァハァと舌を出す呼吸(パンティング)は、水分と一緒に熱を逃がしています。
  3. 代謝にかかわる — 細胞がきちんと働けるよう、体液の状態を一定に保っています。
  4. 老廃物を捨てる — 腎臓へ運ばれた老廃物を、尿として体の外に出します。

ふだんは、体に入ってくる水と出ていく水がうまく調節されています。ところが、このバランスが崩れて体の中に水が溜まりすぎると話は別。溜まりすぎているということは、体のどこかに異常が隠れている可能性があるということです。

そして、水が溜まる「場所」によって、呼び名が変わります。

溜まる場所呼び名
肺の中肺水腫(はいすいしゅ)
胸の中・肺の外側胸水(きょうすい)
お腹の中腹水(ふくすい)

同じ「水が溜まる」でも、場所が違えば見え方も、急ぎ具合も変わってきます。ひとつずつ見ていきましょう。

腹水 — お腹がパンパンに張ってくる

お腹の中に水が溜まった状態です。お腹が張って膨れ、触ると「チャポチャポ」と水の感触を感じることがあります。

症状は、原因となる病気によってさまざまです。ふだんと変わらない様子のこともあれば、食欲や元気が落ちる、下痢や嘔吐、呼吸がしづらいといった様子が出ることもあります。

原因として考えられるのは、肝臓の病気、腎臓の病気、心臓の病気、お腹の中での出血や炎症、タンパクが減る病気、腫瘍など。血液検査や画像検査など、詳しい検査で原因を探していきます。

胸水 — 呼吸がとても苦しそうになる

胸の中、肺の「外側」に水が溜まる状態です。水のせいで肺が十分にふくらめず、とても苦しそうな呼吸になります。

ここでネコちゃんの飼い主さんに、ひとつだけ覚えて帰っていただきたいことがあります。

ネコちゃんが口を開けて呼吸している(開口呼吸)のは、ふだんはしない呼吸のしかたです。非常に危険なサインで、そのままにしておくと命に関わります。早急な対処が必要です。

腹水と違って、見た目に胸がパンパンに膨れることはありません。チャポチャポと感じることもない。外から見て分かりにくいのに苦しい、というのが胸水のこわいところです。

原因は、心臓の病気、フィラリア、腎臓の病気、肝臓の病気、タンパクが減る病気、腫瘍、感染症、外傷など。

なお、溜まっている水の成分にもいろいろな種類があります。無色透明とは限りません。血そのもののような真っ赤な液体のことも、乳白色のことも、それらが混じっていちごミルクのような色に見えることもあります(順に、血胸・乳び胸・膿胸と呼びます)。

肺水腫 — 肺「そのもの」に水が溜まる

胸水が「肺の外側」なのに対して、肺水腫は肺の中に水が溜まります。

肺が水で満たされると、溺れているのと同じような状態になります。早急に対処しなければ、命に関わる危険があります。

原因のほとんどは心臓の病気です。ほかに、肺炎、外傷、感電などでも起こります。

むくみ(浮腫) — 血管の外に水が溜まる

体の中の水分は、血管やリンパ管の中を行き来しながらバランスが保たれています。何らかの原因でこのバランスが崩れると、血管の外に水が溜まって「むくみ」として現れます。

原因は、腎臓の病気、ホルモンの病気、炎症、タンパクが減る病気、心臓の病気、リンパ管の異常など。

動物は毛で覆われているので、ぱっと見では分かりにくいものです。気づきやすいのは手足と顔。「片方の足だけ太い気がする」「顔が腫れぼったい」——そんな見え方をします。

緊急度の目安

ここまで読んで、「じゃあ、うちの子のこれは急ぐの?」と思われたかもしれません。目安を3段階でまとめました。

🔴 すぐにご連絡ください(様子を見ないでください)

呼吸の異常は、命に関わることがあります。迷う時間がもったいないので、まずはお電話ください。

🟠 その日のうちにご相談ください

🟡 早めに一度ご相談ください

迷ったときこそ、ご相談ください

こうした変化が見られたときは、体のどこかに水が溜まっている可能性があります。とくに呼吸の異常は、命に関わることもあるため注意が必要です。

とはいえ、飼い主さんにとっていちばん困るのは「これって病院に行くほど?」という迷いだと思います。

「少し様子を見ようかな…」と迷ったときこそ、ぜひ一度ご相談ください。 早めの受診が、大切なご家族を守ることにつながります。

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※院長の診察・ご相談は別途診察料がかかります。診察をご希望の場合は予約制ですので、事前にご連絡ください。
※お腹や胸に溜まった水は、体重を測っただけでは分かりません。体重測定はあくまで「相談のきっかけ」です。呼吸のしかたやお腹の張りが気になるときは、その場でスタッフにお声がけください。診察が必要かどうか、一緒に考えます。

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参考文献 Ettinger SJ, Feldman EC, Côté E. Textbook of Veterinary Internal Medicine. 8th ed. Elsevier; 2017.
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